専ら物は”廃棄物”、有価物ではありません。
セミナーの冒頭で「これ、何と読むかお解りになる方?」とホワイトボードに「専ら物」と書いて参加者の方に振ってみますと、意外や意外、けっこう皆さんよくご存じです。
廃棄物の業務に少しでも関わったことがある人は、一度ぐらい耳にしたことがあると思いますが、「もっぱらぶつ」と読みます。
廃棄物処理法の条文に「専ら再生利用(リサイクル)の目的となる廃棄物」という記述があり、これをもじって「専ら物」と、そして専ら物を扱う業者さんを「専ら業者」と呼んでいるようです。
”アルミ”や”板ガラス”は専ら物?
「アルミは専ら物に該当しますか?」という質問をいただきますが、くず鉄は広く金属くずと解釈していますので「アルミくず」も専ら物に該当します。
「板ガラスも空き瓶類に該当しますか?」という質問もいただきますが、空き瓶類は広く”ガラスくず”と解釈していますので、「破損した板ガラス」であってもガラス原料のカレットや道路の路盤材等に再利用されるのであれば、これも立派な専ら物です。
専ら物を扱う事業者(専ら業者)の特例措置
昭和45年に廃棄物処理法が制定され、廃棄物の取扱いにいろいろな規制がかかったのですが、これら4品目については、大昔から問題なくリサイクルされてきたいわばリサイクルの優等生であるということと、多くの事業者が中小零細であるということから、専ら物を扱う事業者(専ら業者)に限って次の3つの特例措置がとられました。
●専ら業者の特例措置
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専ら業者の特例措置の根拠条文・通知
特例措置の根拠となる「廃棄物処理法第14条」と、専ら物の対象として4品目を具体例としてあげている「昭和46年に発出された厚生省環境衛生局長から各都道府県への通知(公布:昭和46年10月16日 環整43号)」を引用します。
専ら物の対象品目は廃棄物処理法の条文には記載がなく、半世紀ほど前に発出された昭和46年のこの通知(公布:昭和46年10月16日 環整43号)に列挙された4品目のみが専ら物であると解釈され、現在に至っています。
●廃棄物処理法 第14条第1項(産業廃棄物処理業) |
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廃棄物を扱うのが専ら業者です
最近では全く見かけることがなくなりましたが、「古新聞、古雑誌をトイレットペーパーと交換します。」と言ってスピーカ付きの軽トラで回っていた「古紙回収業者」さんの場合は、「古紙」を価値の有るトイレットペーパと物々交換してくれる訳ですから、この「古紙」は「廃棄物」ではなく「有価物」と考えられます。
「有価物」となると廃棄物処理業の許可はもともと必要ありませんから、厳密に言うとこの場合の「古紙回収業者」さんは、「専ら業者」ではありません。
同様に「金属スクラップ」を有価で買い取るスクラップ業者さんも「専ら業者」ではありませんが、「逆有償」場合は「専ら業者」に該当します。
専ら業者とは、”排出事業者から無償または処理費用を徴収して、これら4品目を回収あるいは処分する”場合でも、処理業の許可(収集運搬業と処分業の両方とも)が不要であり、産廃に該当する専ら物についてはマニフェストの運用も不要であるということです。
専ら業者には”処理基準”が適用されない
業の許可を有する収集運搬業者と処分業者は、法定された処理基準(収集運搬基準・処分基準)に従わなければならないと規定されていますが、廃棄物処理法の条文では許可不要の専ら業者には適用されない事になっています(廃棄物処理法第7条第13項、法第14条第12項)。
そのため、例えば産廃の専ら物を収集運搬する専ら業者には、車両表示義務や書面備え付け義務はありません。
ただし、排出事業者自らが産業廃棄物を収集運搬又は処分をする場合は、法定された処理基準(収集運搬基準・処分基準)に従わなければならないと規定されていますので(廃棄物処理法第12条第1項)、例えば産廃に該当する専ら物を自社運搬する排出事業者には、専ら物に該当しない産廃を自社運搬する場合と同様に、車両表示義務や書面備え付け義務があります。
自社運搬についてはこちらを参照して下さい。
>>> 廃棄物の「自社運搬」は許可不要ですが・・・①
私は専ら業者になれますか?
「私は専ら業者になれますか?」という問い合わせを時々いただきます。
「処理業許可が不要となる特例を特定の事業者に与える」ということなのですが、その”特定の事業者”の具体的な中身を、政省令や施行規則から様々な解釈がなされることが、この専ら物の悩ましいところです。
上記の廃棄物処理法の条文や通知などから判断できるのは、この特例措置は「専ら4品目」に対してではなく、「専ら4品目を取り扱っている業者」に対して出されているということは異論がなさそうです。
そうすると廃棄物処理法第14条にある「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬・・・」の”のみ”という文言や、通知にある「古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は・・・」の”既存の”という文言が大変気になります。
例えば専ら4品目だけでなく、それ以外の廃棄物も処理業許可を取得して取り扱う業者は、専ら業者に該当しないのではとか、法律の公布時点ですでに営業していた専ら業者のみが対象であり、新規参入業者はこれにあたらないのではとか、いろいろな解釈ができます。
ガラ陶の産廃収集運搬業許可をもっている業者が、産廃に該当する「ガラスくず」を専ら物として扱ったり、混合廃棄物の取り扱いの関係で金属くずの産廃収集運搬業許可をもっている業者が、産廃に該当する「金属くず」を専ら物として扱ったりするというのは、それがマニフェストの運用の手間を省略したいがための行為であるとすれば、法の本来の主旨にそぐわない気がします。
逆に、繊維くずや廃プラスチック類の産廃収集運搬業許可をもっている業者が、一廃に該当する「古繊維(繊維くず)」を専ら物として扱うことは何ら問題はないように思えます。
私個人としては、専ら物のリサイクル率の向上とリサイクル事業への新規参入を促すために「専ら4品目であれば、”誰でも”処理業(収集運搬と処分)の許可を取得することなく、リサイクル事業に新規参入できる。」と解釈してよいのではと考えています。
現に環境省は、平成15年2月に「引越時に発生する廃棄物の取扱いについて」というマニュアルの中で、「引っ越し請負業者が不要となった書類等古紙を紙製品の原材料としてリサイクルするために回収する場合については、当該廃棄物を引き取ることは可能である。」と明記しています。
とは言いましても、自治体によって専ら物の取り扱いに温度差があることは確かですので、「私は専ら業者になれますか?」という問い合わせに対しては、ひととおり私見を述べた最後に、毎度毎度とっても便利な常套句を用いています。
「ただし自治体によって解釈に温度差があります。検討している廃棄物が一廃であれば市町村の廃棄物指導課に、産廃であれば都道府県の廃棄物指導課に必ず問い合わせてください。」 |
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記事が長くなりましたので、続きはこちらを >>> ”専ら物”ってナニ?②
「リスクを回避するために産業廃棄物収集運搬業許可を取得しておいた方がいいかな~」と思われた業者さんは、以下を参考にどうぞ。 >>> 許可取得までの流れ 他社の依頼を受けて産業廃棄物を運搬する場合は、『産業廃棄物収集運搬業許可』が必要です。 産廃許可なら横浜市の産廃専門 Y&Y行政書士事務所に全部お任せ下さい! |
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