施行規則の改正により、「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」というカテゴリーが定義され、平成29年10月1日から運用が始まりましたが、ここではどこの事業所でも関わり合いがあると思われる「水銀使用製品産業廃棄物」について考察します。
この記事の前半はこちら >>> 水銀廃棄物の取扱い
「水銀使用製品産業廃棄物」に該当するか否かの判定方法
処分しようとしている廃棄物が、『水銀使用製品産業廃棄物に該当するか否か』を判定するには、環境省のHPのリーフレットがわかりやすいかもしれません。
環境省のHPから↓↓
水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります
リーフレットの2ページと3ページを抜き出してみました。
廃棄物が以下の区分1、2、3のいずれかに該当する場合は、水銀使用製品産業廃棄物に該当します。
●水銀使用製品産業廃棄物の種類 |
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ここにリストアップされた製品をみると、なじみのないものが多いのですが、唯一どこの事業所でも関係するのが「蛍光ランプ」で、医療関連施設では「水銀体温計」や「水銀式血圧計」などでしょうか。
それでは、これらの製品にはどのくらいの量の金属水銀が使われているのでしょうか。
環境省のHPにアップされた「家庭から出た水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」に具体的な数値が出ています。
水銀使用製品 | 製品1個あたりの 水銀使用量 |
蛍光ランプ何本分? |
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蛍光ランプ | 6mg (0.006g) | - |
水銀体温計 | 1.2g | 200本分 |
水銀温度計 | 3.7g | 620本分 |
水銀血圧計 | 48g | 8,000本分 |
蛍光ランプや水銀体温計などを破損させた場合、大気中に出てきた金属水銀は徐々に気化して水銀蒸気となり、これを吸入すると重大な健康被害を引き起こす可能性がありますので、くれぐれも破損させないよう慎重な取り扱いが必要です。
●水銀を使用している蛍光ランプの見分け方
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”水銀使用製品産業廃棄物”の具体的な運用方法は?
それではこれらの製品が廃棄物となった場合、実際にはどのように運用すればよいのか、オフィスから出た廃蛍光ランプを例に簡単に説明いたします。
以前は、オフィスから排出された廃蛍光ランプを外部に処理を依頼する場合、「ガラ陶」と「金属くず」と「廃プラスチック類」の処理ができる許可を有した収集運搬業者や中間処理業者を選定する必要がありました。
それが、廃蛍光ランプは『水銀使用製品産業廃棄物』に該当することになったので、「ガラ陶」と「金属くず」と「廃プラスチック類」に『水銀使用製品産業廃棄物を含む』という条件が付与された許可業者に委託する必要があります。
特に留意しなければならないのは、中間処理業者に処理を委託する場合です。
廃蛍光ランプを処理する中間処理業者は、次の措置を講じなければなりません。
●廃棄物処理法施行令第6条第1項第二号ホ(1) |
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単純な破砕装置のみを有する中間処理業者では廃蛍光ランプを処理できないことになるので、同じ中間処理業者に廃蛍光ランプの処理を委託する場合には、「御社には水銀の回収設備がありますか?(Do you have any mercury recovery equipments for fluorescent lamps?)」と確認する必要があります。
水銀の回収設備がない場合であっても、廃蛍光ランプの積替え保管許可を有していれば委託も可能ですが、そうでない場合はあらたに水銀回収設備を有する中間処理業者を探さなければなりません。
廃蛍光ランプを破損させない
廃蛍光ランプで注意しなければならないのは、環境省は「破損した廃蛍光ランプも水銀使用製品産業廃棄物として取り扱わなければならない」という見解を出していますので、破損して水銀が大気放出された後であっても、普通のガラスくず、金属くず、廃プラスチック類として取り扱うことはできません。
廃蛍光ランプの中間処理を行なう業者さんであっても、「破損した廃蛍光ランプは取扱いできません」という場合がありますので、廃棄物として出す方も収集運搬する方もくれぐれも破損させないための措置を講じる必要があります。
今さら聞けない「蛍光ランプにどうして水銀が入っているの?」
一般社団法人日本照明工業会の資料によると、蛍光ランプが日本で初めて使用されたのが1940年といいますから、白熱電球に代わる省エネのエースとして70年以上も私たちの生活に貢献してきました。
それから半世紀、1996年に白色LEDが実用化されたことを契機にLED照明の普及が始まり、2000年時点の年間出荷数量が4億本だった蛍光ランプは、2013年には年間出荷数量が1億7,500万本と13年間で44%にまで減少しました。
今後は、水俣条約の発効および水銀使用製品産業廃棄物の取扱いの明確化に伴い、蛍光ランプからLED照明への切換えがさらに加速されていくに違いありません。
さて、前述のとおり1本の蛍光ランプには平均約6mg程度の金属水銀が使用され、その一部は気体となって封入されていますが、どうして蛍光ランプに水銀が使用されているかおわかりですか?
あたりまえに使用している蛍光ランプですが、この発光原理を正確に説明できるひとはあまりいないかもしれません。
でも大丈夫です。一般社団法人日本照明工業会が発行している「蛍光ランプ及び使用済み蛍光ランプに関するQ&A 」の中に、蛍光ランプの発光原理のわかりやすい解説がありましたので以下に抜粋しました。
これで、今晩夕飯の時に奥様や子供さんに対して、蛍光ランプの発光原理と使用済み蛍光ランプの取扱いについてサラリと説明できます(このサラリ感が重要です)。
当然に 「さすがお父さん、モノ知りだね!」 となるはずです。
水銀使用製品が破損した時のことを考えてみる
誤って室内で蛍光ランプを1本破損させたとしても、室内の水銀濃度は人体に健康被害を及ぼすまでには至らないとされていますが、あまり気持ちのいいものではありません。
蛍光ランプが寿命を迎え交換が必要になった場合、くれぐれも破損させて水銀を大気放出させないように注意が必要ですが、この際なのでLED照明に買い替えることを検討してみてはいかがでしょうか。
ところで蛍光ランプはまだいいのですが、水銀体温計はそうはいきません。
前述のとおり、水銀体温計には蛍光ランプ200本分に相当する金属水銀が使用されていますから、これが破損した場合を想像するだけでこころ穏やかにはいられません。
今どき一般家庭で水銀体温計を使用するケースはほとんどないと思いますが、引き出しの奥に昔使用していたいわゆる「退蔵品」があるかも知れません。
もし、これら水銀体温計や水銀血圧計などの「退蔵品」がある場合は、市町村が積極的に回収をかけていますので市町村のHPをチェックしてみてください。
焼却炉の排ガスの水銀濃度が異常に高くなって大変なことになるので、間違っても「生ごみと一緒に・・・・・」というのは絶対いけません。
水銀廃棄物に関して別のコラムもアップしました >>> こんな分別はいらない
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