【1】「これは有価物だ!」と主張するには
廃棄物の定義
「廃棄物」は、『占有者自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要になったもの』をいいますが、廃棄物処理法では、次のとおり定義されています。
●廃棄物の定義(廃棄物処理法第2条第1項) |
---|
廃棄物処理法は固形状および液状の廃棄物に対しての規制であり、気体については適用されません。
また、放射性物質で汚染された廃棄物も廃棄物処理法は適用されず、平成24年1月1日に全面施行された「放射性物質汚染対処特措法」(※)によって規制されています。
(※)正式名称:「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」
有価物と廃棄物の境界線は?
有価物は、その字のとおり「他人に買い取ってもらえるような価値の有る物」と定義されます。
有価物と判断された時点で、原則としては廃棄物処理法の適用外ですから、処理業(収集運搬業と処分業)の許可や委託契約書、マニフェストの運用も不要になるので、取り扱っているものが廃棄物ではなく、有価物と判断される場合は非常に大きなメリットがあります。
この有価物のメリットを享受したいがために「恣意的に廃棄物を有価物として取り扱うこと」は、まさに脱法行為です。
ところが、有価物なのか廃棄物なのかの判定は、ポジティブリストに照らし合わせて判断するというような簡単なものではないので、恣意的でないにもかかわらず、知らないうちに廃棄物処理法に違反していたということが多々ある訳です。
廃棄物処理法では、廃棄物であるか有価物であるかは、「総合判断説」といわれるルールに則って「有価物該当性」を判断することとされています。
「判断要素はわかったけど、具体的な判断基準ないの?」と大半の方は思われるでしょうが、残念ながら法律は「総合判断説」を用いて有価物該当性を自らが適切に判断しなさいと言っています。
「総合判断説」を用いて”有価物該当性”を検討する
環境省は「行政処分の指針」で、有価物該当性の判断基準を下記の5項目について具体例を挙げて説明しています。
この5つの判断基準を「総合判断説」と呼んでいます。
判断項目 | 具体例 | |
---|---|---|
1 | 物の性状 |
|
2 | 排出の状況 |
|
3 | 通常の取扱い形態 |
|
4 | 取引価格の有無 |
|
5 | 占有者の意思 |
|
残念ながらこの表の内容を一読しただけでは、何のことやらピンときませんので、次に要旨のみをピックアップしてみました。
有価物として判断するための必要条件は
- 「自分が排出したものは、有価物である(排出した時点では)。」
- 「自分が回収保管したものは、有価物である(収集運搬や保管した時点では)。」
- 「廃棄物をリサイクルしたものは、有価物である(製品として作り上げた時点では)。」
と主張することを「有価物抗弁」といいます。
「有価物抗弁」をするためには、『総合判断説』のポイントをおさえておく必要があります。
原則は、社会通念上無理のない「有価物抗弁」であり、「一般的に考えて???」となる場合は、廃棄物として運用する必要があります。
総合判断説は具体的な判断基準が明確でないので、有価物と判断した理由を説明する際に、上記の1から5までの内容について担保できるエビデンスが必要だということです。
具体的には、対外的にそれを証明できるように「売買契約書」と「品質管理基準」などをきちんと作成し、継続的な売買取引をしている証拠を残すことです。
それを実現するのが大変な場合は、初めから「廃棄物」として運用したほうが賢明かもしれません。
【閑話休題】 これはもう立派な脱法行為です
●買ってもらえる物は何でも有価物だ! 昔から「とにかく1円でもいいから買ってもらったものは廃棄物ではない」という慣習がありますから、取引価格の有無だけで有価物かそうでないかを判断されている相談者が多いように思います。 売買契約書や領収書だけで判断すると確かに「売却している」のですが、違うファイルに綴じてある運送会社からの請求書にある運送費を差し引いたら見事に赤でしたという「逆有償」の話しも出てきます。 ついうっかりならまだしも、監査に引っかからないように巧妙に伝票を操作していたら、これはもう確信犯、立派な脱法行為です。 ●相殺してなぜ悪い! 「廃棄物と有価物を混ぜたら、混合廃棄物ではなく混合有価物だ。」という主張もわからないではないのですが、廃棄物処理法の主旨を真っ向から否定する行為であり立派な脱法行為ですから、心当たりのある事業者さんは今日から改善をしてください。 何かトラブルが起きてこの事実が明るみに出た時のことを考えると、私が事業所の廃棄物担当者だったらおそろしくて夜も眠れません。 ちなみに、有価物と廃棄物を混ざらないように区別した状態で同じトラックに載せて運んでもらうことは全く問題ないのですが、廃棄物についてはマニフェストをきちんと運用する必要があります。 |
---|
『総合判断説』の基本的な部分をみてきましたが、コラムの記事が長くなりましたので、総合判断説の応用方法については、こちらのコラムでどうぞ。 >>> 廃棄物と有価物の境い目は②
「リスクを回避するために産業廃棄物収集運搬業許可を取得しておいた方がいいかな~」と思われた業者さんは、以下を参考にどうぞ。 >>> 許可取得までの流れ 他社の依頼を受けて産業廃棄物を運搬する場合は、『産業廃棄物収集運搬業許可』が必要です。 産廃許可なら横浜市の産廃専門 Y&Y行政書士事務所に全部お任せ下さい! |
---|