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廃棄物と有価物の境い目は①

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【1】「これは有価物だ!」と主張するには

廃棄物の定義

「廃棄物」は、『占有者自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要になったもの』をいいますが、廃棄物処理法では、次のとおり定義されています。   

●廃棄物の定義(廃棄物処理法第2条第1項)
「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体、その他の汚物または不要物であって、固形状または液状のものをいう。

●廃棄物処理法の対象外(環境省通知 環整第43号)

    漁師さん2
  • 気体
  • 放射性物質及びこれによって汚染された物
    ※自己由来によって放射性物質に汚染されたもののうち、汚染レベルが8,000ベクレル以下のものは対象になる。
  • 港湾・河川等の浚渫(しゅんせつ)に伴って生じる土砂その他これに類するもの
  • 漁業活動に伴って漁網にかかった水産動植物等であって、漁業活動を行なった現場付近において排出したもの
  • 土砂および専ら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの

廃棄物処理法は固形状および液状の廃棄物に対しての規制であり、気体については適用されません。

また、放射性物質で汚染された廃棄物も廃棄物処理法は適用されず、平成24年1月1日に全面施行された「放射性物質汚染対処特措法」(※)によって規制されています。 

(※)正式名称:「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」

有価物と廃棄物の境界線は?

廃棄物と有価物の境目は?

廃品回収車 (2)有価物は、その字のとおり「他人に買い取ってもらえるような価値の有る物」と定義されます。

有価物と判断された時点で、原則としては廃棄物処理法の適用外ですから、処理業(収集運搬業と処分業)の許可や委託契約書、マニフェストの運用も不要になるので、取り扱っているものが廃棄物ではなく、有価物と判断される場合は非常に大きなメリットがあります。

この有価物のメリットを享受したいがために「恣意的に廃棄物を有価物として取り扱うこと」は、まさに脱法行為です。

ところが、有価物なのか廃棄物なのかの判定は、ポジティブリストに照らし合わせて判断するというような簡単なものではないので、恣意的でないにもかかわらず、知らないうちに廃棄物処理法に違反していたということが多々ある訳です。

廃棄物処理法では、廃棄物であるか有価物であるかは、「総合判断説」といわれるルールに則って「有価物該当性」を判断することとされています。

「判断要素はわかったけど、具体的な判断基準ないの?」と大半の方は思われるでしょうが、残念ながら法律は「総合判断説」を用いて有価物該当性を自らが適切に判断しなさいと言っています。

「総合判断説」を用いて”有価物該当性”を検討する

環境省は「行政処分の指針」で、有価物該当性の判断基準を下記の5項目について具体例を挙げて説明しています。

この5つの判断基準を「総合判断説」と呼んでいます。

判断項目 具体例
物の性状
  • 利用用途に要求される品質を
    満足
    し、かつ飛散、流出、
    悪臭の発生等の生活環境の
    保全上の支障が発生する
    おそれのない
    ものであること
  • 実際の判断に当たっては、
    生活環境の保全に係る関連
    基準(例えば土壌の汚染に
    係る環境基準等)を満足すること
  • その性状についてJIS規格
    等の一般に認められている
    客観的な基準が存在する場合
    は、これに適合していること
  • 十分な品質管理がなされて
    いること
排出の状況
  • 排出が需要に沿った計画的な
    もの
    であり、排出前や排出
    時に適切な保管や品質管理が
    なされていること
通常の取扱い形態
  • 製品としての市場が形成
    されており、廃棄物として
    処理されている事例が通常は
    認められないこと
取引価格の有無
  • 占有者と取引の相手方の間で
    有償譲渡がなされており、
    なおかつ客観的に見て当該
    取引に経済的合理性があること
  • 取引の相手方は名目を問わず処理料金に
    相当する金品の受領がないこと
  • 譲渡価格が競合する製品や
    運送費等の諸経費を勘案して
    も双方にとって営利活動とし
    て合理的な額であること
  • 当該有償譲渡の相手方以外の
    者に対する有償譲渡の実績
    あること
占有者の意思
  • 客観的要素から社会通念上
    合理的に認定し得る占有者の
    意思として、適切に利用し
    若しくは他人に有償譲渡する
    意思が認められること
  • 放置若しくは処分の意思が
    認められない
    こと
  • 単に占有者において自ら
    利用し、又は他人に有償で
    譲渡することができるもので
    あると認識しているか否かは
    廃棄物に該当するか否かを
    判断する際の決定的な
    要素とはならない
  • 上記1から4までの各種判断
    要素の基準に照らし、適切な
    利用を行おうとする意思が
    あるとは判断されない場合、
    又は主として廃棄物の脱法
    的な処理を目的としたものと
    判断される場合には、
    占有者の主張する意思の
    内容によらず、廃棄物に該当
    する

残念ながらこの表の内容を一読しただけでは、何のことやらピンときませんので、次に要旨のみをピックアップしてみました。

有価物として判断するための必要条件は

  • 「自分が排出したものは、有価物である(排出した時点では)。」
  • 「自分が回収保管したものは、有価物である(収集運搬や保管した時点では)。」
  • 「廃棄物をリサイクルしたものは、有価物である(製品として作り上げた時点では)。」

と主張することを「有価物抗弁」といいます。

「有価物抗弁」をするためには、『総合判断説』のポイントをおさえておく必要があります。

原則は、社会通念上無理のない「有価物抗弁」であり、「一般的に考えて???」となる場合は、廃棄物として運用する必要があります。

ポイント●有価物抗弁のための必要条件

  1. (物の性状)
    利用用途の要求品質を満足し、生活環境保全上の支障が生じるおそれがない
  2. (排出の状況)
    需要に沿って定期的に排出される
  3. (通常の取引形態)
    製品としての市場が形成されおり、通常は廃棄物として処理されていない
  4. (取引価格の有無)
    有償譲渡されており、処理費を徴収していない
  5. (占有者の意思)
    排出事業者が適切に利用できる有価物だと思っており、有償譲渡する意思がある

総合判断説は具体的な判断基準が明確でないので、有価物と判断した理由を説明する際に、上記の1から5までの内容について担保できるエビデンスが必要だということです。

具体的には、対外的にそれを証明できるように「売買契約書」と「品質管理基準」などをきちんと作成し、継続的な売買取引をしている証拠を残すことです。

それを実現するのが大変な場合は、初めから「廃棄物」として運用したほうが賢明かもしれません。

【閑話休題】 これはもう立派な脱法行為です

●買ってもらえる物は何でも有価物だ!
日々の電話相談では、廃棄物か有価物かの判断についてのお問合せもいただきます。

昔から「とにかく1円でもいいから買ってもらったものは廃棄物ではない」という慣習がありますから、取引価格の有無だけで有価物かそうでないかを判断されている相談者が多いように思います。

売買契約書や領収書だけで判断すると確かに「売却している」のですが、違うファイルに綴じてある運送会社からの請求書にある運送費を差し引いたら見事に赤でしたという「逆有償」の話しも出てきます。

ついうっかりならまだしも、監査に引っかからないように巧妙に伝票を操作していたら、これはもう確信犯、立派な脱法行為です。

●相殺してなぜ悪い!
わりと良い値段で買い取ってもらえる有価物と処理費用を支払う必要のある廃棄物を、同じ業者さんに同時に引き取ってもらい、「相殺して全体を有価物として」伝票を切ってしまう行為があります。

「廃棄物と有価物を混ぜたら、混合廃棄物ではなく混合有価物だ。」という主張もわからないではないのですが、廃棄物処理法の主旨を真っ向から否定する行為であり立派な脱法行為ですから、心当たりのある事業者さんは今日から改善をしてください。

何かトラブルが起きてこの事実が明るみに出た時のことを考えると、私が事業所の廃棄物担当者だったらおそろしくて夜も眠れません。

ちなみに、有価物と廃棄物を混ざらないように区別した状態で同じトラックに載せて運んでもらうことは全く問題ないのですが、廃棄物についてはマニフェストをきちんと運用する必要があります。

『総合判断説』の基本的な部分をみてきましたが、コラムの記事が長くなりましたので、総合判断説の応用方法については、こちらのコラムでどうぞ。 >>> 廃棄物と有価物の境い目は②

任せなさい「リスクを回避するために産業廃棄物収集運搬業許可を取得しておいた方がいいかな~」と思われた業者さんは、以下を参考にどうぞ。
>>> 許可取得までの流れ

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