廃棄物管理に携わる関係者が、廃棄物処理法を守らない時又は守れない時、お役所はどのような対応をとるのでしょうか。
一般的には、強制力の軽重で「行政指導」⇒「行政処分(措置命令等)」⇒「刑事処分」が下されます。
【1】廃棄物管理における「行政指導」
環境省は行政指導に対し、以下のような行政処分の指針(行政指導について)を通知しています。
ポイントは「任意の協力を前提としており、法的強制力はない」ということです。
それでは、行政指導をまったく無視してよいかというとそうではありません。
指針では、「行政指導で効果が無いときは、速やかに躊躇せず次のステップである行政処分(改善命令、措置命令、事業停止命令、許可取消)に移行しなさい。」と言ってます。
「イエローカードばかり出すのではなく、積極的に笛を吹いて、レッドカードを出していいんですよ。ためらう必要なんてないですよ。」と言っています。
さてその行政指導には、「~しなければならない(Must)」型と「~したほうが良い(Should)」型のふたつのタイプがあります。
Must型/行政指導(無視すると罰則の可能性あり)
法的根拠を持たないのですが、これを無視して従わない場合、行政処分につながって、罰則を受ける可能性があります。
収集運搬車のステッカーの表記がかすれて判読が難しい場合、明らかに廃棄物処理法違反ですが、いきなり行政処分や刑事告発は行われず、「改善してくださいね」という行政指導を受けます。
行政指導に従って速やかに改善すればそれで終わりですが、これを無視すると行政処分が待っています。
Should型/行政指導(無視しても罰則の可能性なし)
廃棄物処理法の本来の目的である「公衆衛生、生活環境保全の確保のため」を考えての指導で、たとえ無視したとしても行政処分につながって罰則を受ける可能性はありません。
積替え保管有りの収集運搬業の許可を申請する際、「周辺住民の同意書を取ってください」というようなことがこの行政指導にあたり、これに従わなくても行政処分を受けることはありませんが、これを受け入れないと許可申請が先に進まず、いつまで経っても許可が取れません。
【2】廃棄物管理における「行政処分」
《行政処分の種類》
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行政処分の時効は何年? 刑事処分の時効は何年?
行政処分の中味を見ていく前に、行政処分の時効について考えます。
それでは問題です。
廃棄物処理法違反事件における「刑事処分」の時効は5年ですが、お役所から出される「行政処分」の時効は何年でしょうか?
そうなんです、「行政処分」に時効はありません。
ですから、たとえ10年前の不法投棄であっても実行者が特定された場合は、廃棄物の撤去を求める「措置命令」が行政から実行者に対して発出されます。
しかし、大抵は措置命令が出されても、実行者に不法投棄の廃棄物を完全撤去する資力が残っていないのがほとんどなので、行政が私たちの税金を投入して代執行をすることになります。
改善命令/「生活環境の保全上の支障」なし
改善命令とは、基準(運搬基準、処分基準、保管基準など)に合致していないので、修正してその基準に合わせなさいという命令です。
「生活環境の保全上の支障を生じ、あるいは生じる危険性が無い場合」に出される命令のことで、「将来に向けて廃棄物処理基準違反を是正させるため」に出すのが「改善命令」です。
排出事業者Bの委託を受けた収集運搬業者Aが、運搬基準に反する運搬をしていた場合であって、「生活環境の保全上の支障を生じ、あるいは生じる危険性が無い」と判断されると、収集運搬業者Aに対してのみ改善命令が出されます(通常は運搬を委託した排出事業者には改善命令は出されません)。
この改善命令に従わなかった場合、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」の刑事罰の対象になります。
措置命令/「生活環境の保全上の支障」あり
廃棄物処理基準に反する方法で廃棄物の処理が行われたことで、「生活環境の保全上の支障を生じ、あるいは生じる危険性がある場合」に出される命令のことで、「現在既に環境汚染が起こっている」または「これから環境汚染を起こす可能性がある」行為に対しては「改善命令」ではなく、この「措置命令」が出されます。
命令の内容は、「生活環境保全上の支障の除去や支障の発生防止のために必要な措置をとること」が命じられ、措置命令に従わなかった場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」の刑事罰の対象になります。
前述の収集運搬業者Aが、適正な運搬容器を使用せずに産廃を運搬したために、悪臭の発生や火災などの危険性が高まり、「生活環境の保全上の支障が生じた」場合は、収集運搬業者Aが措置命令を受けます。
また、収集運搬を委託した排出事業者Bに「委託基準違反」があった場合は、実行行為者である収集運搬業者Aと同様の措置命令を受ける場合があります。
さらに限定的ではありますが、排出事業者Bが「委託基準」を順守していた場合でも、実行行為者である収集運搬業者Aに原状回復(生活環境保全上の支障の除去)する資力がない場合、排出事業者Bが原状回復することを命じられることがあります。
措置命令と同時に刑事処分を科されることはありませんが、通常はその事実を地方自治体から公表されるために、報道機関等から社名と措置命令の内容等が報道される可能性があります。
措置命令の対象
《不適正処理・委託基準違反》 |
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《その他の違反》 |
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代執行
行政処分にはあたらないのですが、産廃の不適正処理が行われた際の「原状回復」の方法のひとつとして「代執行」があります。
「代執行」とは言葉のとおり、「行政が措置命令を出したが、措置命令を受けた者がその命令に従わないため、行政が代わりに原状回復(生活環境保全上の支障の除去や支障の発生防止のために必要な措置)を行なうこと」をいいます。
例えば有害な産廃が不法投棄されため、行政が生活環境保全上の支障ありと判断し、実行行為者に速やかに産廃の撤去をするよう措置命令を出したとします。
ところが、不法投棄の実行行為者にはその資金がないため産廃の撤去ができず、いつまでたっても「生活環境保全上の支障」を除去することができません。
このような場合に、行政はいったん税金を使って実行行為者に代わって有害な産廃の回収作業を行ない、代執行に要した費用を債権として実行行為者に取り立てを行なう仕組みになっています。
ところが、たいていの場合、資金が無く措置命令に従えなかった実行行為者にそれを支払う資力がありませんから、では誰に払ってもらおうと考えた時、処理を委託した排出事業者に払ってもらおうとなるわけです。
措置命令は、排出事業者もその対象になることを覚えておく必要があります。
事業停止命令と許可取消処分
行政処分には改善命令や措置命令の他に、業務停止命令や許可取消がありますが、それらの指針が環境省から出されています。
廃棄物処理法25条、26条、27条、28条、29条、30条に罰則の規定がありますが、25、26、27条の違反は「許可取消」となり、28条以降の違反に関しては、事業停止90日、60日、30日など規定されています。
許可権限者である自治体は、おおむねこの通知に準じて行政処分を行っています。
参照 ⇒ 標準的処分(取消や停止の日数など)
◆まとめ
廃棄物管理に携わる者が、廃棄物処理法を守らない又は守れない場合、行政を次のようなアクションをとります。
- ~した方がいいですよ(Should)型と~しないといけませんよ(Must)型の行政指導があります。
- Must型の行政指導を無視すると改善命令や措置命令という行政処分が待っています。
- 行政処分を無視すると刑事罰が待っています。
- 収集運搬業者が不法投棄を行なうと、原状回復しなさいという措置命令が出されますが、当事者に資力がない場合は、排出事業者に措置命令が来る可能性があります。
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