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刑事処分と両罰規定 その①

【1】怖い怖い「両罰規定」

罰則規定の中味を知っておくことの重要性

このサイトに訪問していただいた方々のうち、15%程度の人がこの刑事処分のコラムを見ていただいています。

知らず知らずのうちに法律違反をしていたというリスクを抑える最善策は、罰則規定の内容をあらかじめ知っておくことだと確信してこのサイトを訪問していただいたのでしょうか。

それとも、故意にしろ過失にしろ、起きてしまった行為にどれほど重大性があるのかを確認するためでしょうか。

確かに「やっちまったよー」という方からこれから先の身の振り方に関する問合せも少なからずあり、今日も電話の向こう側の人生にいろいろな想像を巡らせています。

そして同時に、廃棄物処理の関係者にとって、『罰則規定の内容を熟知しておくことの重要性』をヒシヒシと感じています。

後述しますが、廃棄物処理法の罰則規定は、建設業法や宅建業法などとは比べ物にならないほど厳しく、不法投棄などは量刑の重さもさることながら、たとえ『未遂』に終わっても罪に問われる可能性があります。

裏を返せば罰則規定は鏡であり、量刑の重さは産業廃棄物の不適正処理がいかに多いかを雄弁に物語っていると言えます。

両罰規定とは

廃棄物処理法には、「業務の責任者・担当者(個人)」が「事業活動に関して」廃棄物処理法違反を起こした場合、違反をした「行為者(個人)」と業務を行なっている「法人(会社)」の両方が同時に刑事罰の対象になると規定しています。

従業員が不法投棄をしてしまったという事例で具体的に両罰規定を見てみましょう。

●従業員が不法投棄をしてしまったら・・・
刑事さん2
  1. 産業廃棄物収集運搬業者の一従業員が、指定された中間処分場に廃棄物を運搬せず、こっそり近場の山中に不法投棄した場合、それが発覚するとその従業員は当然に逮捕され、刑事被告人として刑事罰が科されることになります(初犯であれば執行猶予付きの懲役刑と罰金刑の併科が一般的でが、再犯の場合は実刑が待っています)。
  2. 不法投棄は、両罰規定が適用されますので、この従業員を雇用している会社は不法投棄に直接関与していなくても法人として刑事処分を受ける可能性があります。
  3. 会社に対する刑事処分がたとえ30万円の罰金であったとしても、「廃棄物処理法違反の罰金刑」はズバリ欠格要件に該当しますから、「許可権者(都道府県知事等)は必ず許可を取り消さなければばらない」というルールに則り、その会社が持っているすべての「産業廃棄物処理施設の設置許可」や「産業廃棄物処理業の許可」が取り消されることになります。
  4. しかも、許可取消し処分がなされた場合、この会社はたとえ経営陣が一新されたとしても、その先5年間にわたって「産業廃棄物処理施設の設置許可」や「産業廃棄物処理業の許可」を取得することができません。

これが世にも怖ろしい「両罰規定」です。

両罰規定の対象となる違反行為

両罰規定における法人に対する最高刑は「3億円の罰金」、最も軽い刑で「30万円以下の罰金」です。

●最もやってはいけない違反行為(3億円の罰金)ドラム缶焼却

  1. 廃棄物処理業(収集運搬や中間処分)の無許可営業
  2. 廃棄物の不法投棄(未遂も同じです)

    • 他人の土地に廃棄物を勝手に投げ捨てる。
    • 自分の敷地内に廃棄物を埋めてしまう。
    • 処分のあてが無いまま、廃棄物を自分の敷地内に長期間放置する。
  3. 廃棄物の不法焼却(平たく言うと野焼きのこと、未遂も同じです)
    【以下は例外規定】

    • 家畜伝染予防法に基づく患畜又は疑似患畜の死体の焼却
    • 森林病害虫等防除法による駆除命令に基づく病害虫の付着した枝条又は樹皮の焼却
    • 河川管理者による河川管理で伐採した草木の焼却
    • 海岸管理者による漂着物の焼却
    • 災害時における木くず等の焼却
    • 風俗習慣上又は宗教上の地域の行事で、不要となった門松やしめ縄等の焼却
    • 農業者が行なう稲わら等の焼却
    • 漁業者が行なう漁網に付着した海産物等の焼却
    • 日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なもの(たき火、キャンプファイヤなどを行なう際の木くず等の焼却)
  4. 廃棄物の不正輸出(未遂も同じです)

3億円の罰金でなくても、30万円の罰金でも許可取消し処分は同じですし、「未遂」に終わったとしても立件されれば罪に問われます。

過去の違反事例を見ますと、会社の経費削減に少しでも寄与したいという信念で、よかれと思って違反行為をしてしまう従業員が現実にいます。

従業員自身が個人的に刑事処分を受け、会社も併せて罰金を受けて、許可の全てを取り消されるという『ことの重大さ』を認識する必要があります。

たった一人の従業員の行動が会社の運命を左右してしまいますから、全社挙げて廃棄物処理法をいかに遵守するかが問われることになります。

●【閑話休題】 ドラム缶焼却を甘く見てはいけない

先日もあるお客様からご相談の電話をいただきました。

「会社の敷地でドラム缶の大きなやつでゴミを燃やしていたら、警察が来て『廃棄物処理法違反だ』と言われたけど、どうしましょう?」

どうやら近状の人が通報したようですが、不法焼却の現行犯ですから弁解のしようがありません。

「弁護士さんに対応を相談されてはいかがでしょうか」とお答えするしかできませんでしたが、その後どうなったのかとても気がかりです。

農耕作業の一環で昔から稲わらを田んぼで燃やすことは不法焼却に該当しないというのが一般的ですが、これさえも最近では近所の住民からクレームがついて問題になることがあるようですから、工事現場で暖をとるために廃材を燃やすなどということは、もはや全く許されない世の中になってしまいました。

構造基準に合わない「ドラム缶焼却炉」も野焼きと判断されるので要注意です。

両罰規定の概要を見てきましたが、具体的な刑事処分については次のコラムを。 >>> 刑事処分と両罰規定 その②

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