一般廃棄物行政は、市町村の自治事務ですから、処理業に関する許可やリサイクル計画策定など、市町村には大きな責任と権限があります。
各市町村は、リサイクルの進展や人口動向などを見据えて、毎年「廃棄物処理計画」を策定しますが、これに合わせて廃棄物処理業者の数が決められますので、許可されるされないは市町村長の裁量に左右され、中にはまったく新規の許可申請を受け付けていない市町村もあります。
日本全国で1,700あまりの市町村がありますが、そのほとんどが一般家庭から出る家庭系一般廃棄物は、市町村自らまたは市町村から委託を受けた「委託業者」が収集運搬し、オフィスや飲食店などの事業系一般廃棄物については、「許可業者」に委ねられています。
そして、平成26年には、「一般廃棄物処理業は、専ら自由競争に委ねられるべき性格の事業とは位置付けられていない。 」という要旨の判決を最高裁が下しています。
私には、行政が「家庭から出てくる廃棄物の処理については、そーっとしておいて。」と言っているように思えます。
環境省の発表によると2021年度(令和3年度)に日本全国で処理された一般廃棄物の総量は、4,095万トン(東京ドーム約110杯分)で10年前と比べて10%以上も減少しています(家庭系ごみ:事業系ごみ=71:29)。
ゴミの排出量が年々減少傾向にあるのは大変よいことなのですが、小さくなる一方のパイを許可業者が奪い合い過当競争に陥ることは看過できません。
市町村は、許可業者間の自由競争によってサービスコストが低減することよりも、決まった仕事をコツコツと丁寧に、一年をとおして安定的に継続的に運営してもらえる許可業者を一番に必要としていますから、許可業者の数を自ずとコントロールせざるをえないのでしょう。
さらに、永年にわたって市町村とともに廃棄物行政を支えてきた既存の許可業者には、行政担当者を満足させる実績とノウハウがありますから、その許可業者が廃業するかまたはよほどのことがない限り、ルーキーを抜擢することはないだろうと思います。
市町村が「委託業者」と契約する際、全体の半分以上の自治体で競争入札方式ではなく随意契約方式が採用されていますから、市町村が「委託業者」に期待することと、「許可業者」に期待することは、たぶん同じではないかと想像する訳です。
しかし、日本が世界に類を見ないくらいの少子高齢化社会が進展していることを考えると、これからもっともっと遺品整理や片付けを業者に依頼したいという需要は増えるでしょう。
行政に是非お願いしたいのは、このような需要に柔軟に対応できるよう、一般廃棄物収集運搬業許可の要件等の見直しをしていただき、既存の許可業者さんとのバランスも考慮しながら、遺品整理や片付け整理の業者さんにも家庭系一般廃棄物の収集運搬の門戸を少しばかり開放してもらえないかと思います。
全くの余談ですが、前述の環境省の発表によると2021年度(令和3年度)の1人1日当たりのごみ(一般廃棄物)の平均排出量は890グラムだそうです。
人口50万人以上の市町村のうち、排出量の少ないいわばリデュースの優等生は、東京都八王子市(748グラム)で、京都市(758グラム)、愛媛県松山市(761グラム)と続き、わが街横浜市(807グラム)は5番目にランキングされています。
ひとは生きている限り一日1㎏弱、年間320㎏のゴミを出して地球環境に負荷をかけているんですね。
今更ながら3R(リユース・リデュース・リサイクル)の重要性を思わずにはいられません。
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